近年の歯科医療は、医科とともに科学の進歩によりめまぐるしく進化してきています。その中でもインプラント治療は科学的根拠を基にした咬合回復の治療法の一つとして、注目を浴びているのは周知の事実です。
しかし、今日のように多岐にわたる情報が飛び交う中で、誤った情報や経験談から治療を施行した結果、トラブルが起きた、という報告が残念ながら増加しています。また、業者や個人の営利目的、経営戦略の手段として用いられていることも耳にします。
わたくしはインプラント治療を1992年に臨床応用してから今までに1000人以上の患者さんに用いてまいりました。咬合回復に優れ、違和感が少なく、予知性も高く、多くの患者さんにおいて満足度が高く、QOLの回復・向上に貢献していると思われます。しかし、現在でも私にとりましては、あくまで治療の選択枝(オプション)の一つであって、それがすべてではありません。義歯やブリッジで充分満足される方もいらっしゃいますし、状況によっては欠損部を歯牙移植、矯正を応用して、またそれらを複合して咬合回復を行うことも多々あります。患者さんの要望によっても治療方針は異なってきます。
特に移植 矯正 インプラントは欠損補綴を変えること(咬合支持数の増加)のできる治療法として有用であり、状況によっては残存歯に負荷をかけることなく治療のゴールに到達することができます。そして、このことはひいては天然歯の保護、咬合崩壊の予防、予知性を高めることになります。QOLの向上、アンチエイジングもその範疇にあります。しかしあまりにも治療のゴールの設定を高くしたり時期を誤ると、治療期間の中、不測の事態に対して自らリスクを抱えたり、信頼を失う事になりかねません。また患者さんの希望は治療が進むにつれて変わっていくことも臨床ではよく見られる光景です。
今回、私の少ない日常臨床の中でありますが、欠損補綴を補う方法としてのインプラントの位置づけ、また他の治療法との選択の基準、そしてそれは、いつ どのようにして行っているか、さらに、限られた条件(期間や費用等の制約)のなかでは何を、どのように応用しているか、天然歯との共存にはどのような配慮が必要であるか。
その他
咬合回復だけではなく天然歯保護の為のインプラントの用い方
インプラントの他の分野(矯正等)への応用
長期症例から学ぶインプラントの効果
歯科医療のもたらすウエルカムエイジングの実践 等とともに、
今回はインプラントの光と影についても少し講演の中でお話しして皆様と一緒に考えたいと思います。
湘南デンタルケアーインプラントクリニック 重原聡